アパートの孤独死の損害賠償|特殊清掃費と家賃損失を回収する請求の順序

アパートで入居者が孤独死した場合、「特殊清掃の費用は遺族や保証人に請求できるのか?」「病死でも損害賠償は請求可能か?」と悩む大家様や管理会社様も多いのではないでしょうか。
大家様の慰謝料は請求できませんが、病死であっても特殊清掃や原状回復の実費は請求可能です。その場合の最初の請求先は、法定相続人となります。
この記事では、アパートの孤独死における損害賠償の請求方法を解説します。請求できる場合とできない場合、過去の判例、請求の順序、大家様が取るべき行動に分けて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

2008年より特殊清掃の現場に従事|特殊清掃2,000件超
一般廃棄物収集運搬会社で8年間の業務経験を積み、2008年から遺品整理・特殊清掃の現場に従事。
孤独死現場をはじめ、ゴミ屋敷、汚部屋、カビ・ヤニ汚れ、火災・水害現場の復旧など、累計2,000件を超える現場に対応しています。
IICRC国際資格認定 TCST(特殊清掃)/FSRT(火災復旧)保有(IICRC登録番号:70139861)
アパートの孤独死で損害賠償を請求できる場合
請求できるかどうかは、死因と損害の種類次第です。
自殺や入居者の重大な過失があれば家賃の損失まで対象となる一方、自然死であっても特殊清掃や原状回復の実費は請求可能です。
厳密には、入居者の故意・過失による「損害賠償」と、賃貸借契約に基づく「原状回復費用」は法的な性質が異なります。
しかし、どちらも相続人などに求める点では同じであるため、本記事ではまとめて「請求」として解説します。
死因と損害の項目ごとに請求の可否をまとめると、以下のとおりです。
| 損害項目 | 自殺 | 自然死(病死・老衰) |
|---|---|---|
| 特殊清掃・原状回復の費用 | ○ | ○ |
| 明け渡しまでの未払い家賃 | ○ | ○ |
| 家賃の減額分・空室の損失 | ○ | ×(原則) |
| 大家様の慰謝料 | × | × |
ゴミ屋敷化など入居者の重大な過失があれば、自然死でも家賃の損失を請求できる可能性があります。
死因が不明な場合や他殺の場合は、個別の事情によって判断が分かれます。自分のケースがどれに当たるかを判断する手がかりは、次の3つの根拠です。
どれに当たるかによって、請求できる損害の範囲が決まります。
自殺による孤独死で部屋に損害が出た場合
自殺による孤独死では、特殊清掃や原状回復の費用に加え、家賃の損失まで請求できると考えられています。
自殺は入居者の意思による行為で、善管注意義務(借りた部屋を注意して使う義務)に反するためです。
請求の対象になりやすい損害は、次の3つです。
- 特殊清掃費用と汚染箇所の原状回復工事費用
- 残置物の撤去費用
- 事故物件になったことによる一定期間の家賃減額分や空室の損失
日本少額短期保険協会の「第10回孤独死現状レポート」によると、孤独死の死因のうち自殺は8.3%を占めます。
40代以下に限ると自殺の割合は2割を超えるため、若い単身者向けのアパートも無関係とはいえません。
家賃の損失をどこまで請求できるかは事情によって異なるため、まずは過去の類似判例を参考に請求額の目安を立てましょう。
ゴミ屋敷化など入居者の重大な過失で損害が広がった場合
入居者のゴミ屋敷化が損害を広げた場合は、重大な過失として賠償が認められる可能性があります。
大量のゴミが臭いや体液を吸い込み、片付けと消臭の手間が大きく増えるためです。
実際に当社が対応した神奈川県川崎市の2DKは、死後約4か月で見つかったゴミ屋敷の現場でした。
家財は2トントラック3台分に上り、費用は遺品整理と特殊清掃で税込963,360円(消費税8%時の実例)です。
作業には6日間(うち消臭3日間)かかっています。


家財の量が多いほど作業日数と費用が膨らむことが、金額からも分かります。
ただし、どこからを重大な過失とみなすかは個別の判断となるため、交渉に備えて現場の記録(写真・見積書)を詳細に残しておいてください。
警察の検視が終わり、入室許可が出たら、まずは専門業者に現場の確認と見積もりを依頼して被害の状況を把握しましょう。
見積書は損害を請求する際の根拠にもなるため、無料見積もりフォームから早めにご相談ください。
自然死で汚れた部屋の特殊清掃や原状回復の費用を求める場合
病気や老衰による自然死でも、特殊清掃と原状回復の実費は相続人などに請求できます。
部屋を借りたときの状態に戻して返す原状回復義務は、相続人に引き継がれるためです。
契約は相続人が解約して明け渡すまで続くので、それまでの家賃も請求の対象となります。
損害の規模感は、日本少額短期保険協会「第10回孤独死現状レポート」の平均値を参考にするとよいでしょう。
| 損害項目 | 平均損害額 |
|---|---|
| 遺品整理(残置物処理)費用 | 294,131円 |
| 原状回復費用 | 494,344円 |
| 家賃損失 | 337,035円(家賃保証の平均支払額) |
3項目のうち、家賃損失のみ「保険の平均支払額」のデータとなりますが、実費の平均である他2項目と合わせると、合計で100万円を超える計算になります。
川崎市川崎区の1Kアパート(死後2か月)では、原状回復工事まで税込540,216円(消費税8%時)でした。


費用の詳細は以下です。
| 遺品整理作業 | 110,000円 |
|---|---|
| 特殊清掃 | 185,000円 |
| 原状回復工事 | 205,200円 |
| 小計 | 500,200円 |
| 消費税(8%) | 40,016円 |
| ご集金総額 | 540,216円 |
実際の作業事例は『賃貸アパートでの孤独死による特殊清掃と原状回復工事(川崎市川崎区)』で紹介しています。
アパートの孤独死で損害賠償を請求できない場合
請求できないのは、入居者に責任がない損害と、金額や因果関係を証明できない損害の2種類です。
見積もりや家賃の損失のうち、どれを自己負担として見込むべきかを次の2つから見極めてください。
請求できない損害をあらかじめ知っておくと、相続人との話し合いで無理な要求をせずに済みます。
自然死で家賃の減額分や風評被害を求める場合
病気や老衰による自然死では、事故物件になったことによる家賃の減額分や風評被害は請求できません。
入居者は自分の死を予見できず、部屋の使い方に落ち度があったとはいえないためです。
突然死は誰にでも起こりうるため、入居者の善管注意義務違反は認められにくい傾向があります。
ただし、持病で突然死が十分に予見できたなど特殊な事情があれば、判断が変わる余地もあります。
一方で、汚れた部屋の特殊清掃や原状回復の実費は、自然死でも請求の対象から外れません。
「自然死だから一切請求できない」と早合点せず、実費と家賃の損失を分けて考えることが大切です。
大家様の慰謝料や将来の機会損失を求める場合
大家様の精神的な苦痛に対する慰謝料や将来の入居率の低下は、請求が認められにくい損害に当たります。
金額を客観的に算定しにくく、孤独死との因果関係を証明するのが難しいためです。
請求が認められにくい損害は、次の3つです。
- 大家様の精神的な苦痛に対する慰謝料
- 入居率の低下による将来の機会損失
- 物件のイメージ低下による資産価値の目減り
孤独死そのものは賃貸借契約の違反ではないため、こうした間接的な損害を連帯保証人に求めるのも難しいでしょう。
慰謝料や将来の空室損害などを請求額に含めると、相続人から過大な請求と受け取られ、実費の回収まで遅れるおそれがあります。
請求額は、見積書や領収書で金額を示せる損害に絞るほうが、結果として回収の見通しが立ちやすくなります。
アパートの孤独死の損害賠償が争われた判例
裁判所の判断は、死因によって明確に分かれます。
自殺では家賃の損失まで賠償が命じられる一方、自殺と認められない死亡では実費の請求に限られる傾向にあります。
死因ごとに裁判所が何を認め、何を退けたのかを、代表的な3つの判例で確認しましょう。(参照:一般社団法人 不動産適正取引推進機構)
3件を比べれば、自分のケースでどこまで請求が通りそうかの目安がつかめます。
自殺した入居者の相続人に逸失利益の賠償が命じられた判例
東京地裁の平成19年8月10日判決では、アパートで自殺した入居者の相続人と連帯保証人に対し、約132万円の賠償が命じられました。
家賃月額6万円の都内物件で、大家側が逸失利益(家賃収入)の補填を求めた事案です。
裁判所は、事故から1年目を「貸せない期間」とし賃料全額を損害と認定しています。
2〜3年目も「家賃を下げざるを得ない期間」と判断され、半額分の請求が認められました。
| 期間 | 認められた損害 |
|---|---|
| 1年目(貸せない期間) | 賃料の全額 |
| 2〜3年目(賃料を下げざるを得ない期間) | 賃料の半額 |
ただし、事故部屋以外の隣室に関する家賃損失については支払いが退けられています。
請求可能な家賃の損失は数年分が目安になると言えるでしょう。
自殺であっても、無制限に損害を請求できるわけではない点に注意が必要です。
死因不明の孤独死で逸失利益の賠償が認められなかった判例
東京地裁平成29年9月15日判決は、死後約2か月半が経過した孤独死において、空室損害の賠償を否定しました。
家賃10万円の物件で布団から床への汚損が激しく、大家側は原状回復費等に加え1年間の家賃半額分を空室損害として請求しています。
しかし、死因不明で自殺と断定できず、持病もないため死亡の予見は不可能だったと判断されました。
入居者に善管注意義務違反(社会通念上あるいは客観的に見て当然要求される注意を払う義務)はなく、空室損害の支払いは退けられています。
一方で、約63万円の原状回復費と明け渡しまでの家賃は相続人に支払いが命じられました。
さらに、大家側が書面で請求した時点で相続人は債務を認識できたとされ、3か月経過後の相続放棄は無効とされています。
自然死でも汚損部分の原状回復費用が認められた判例
東京地裁昭和58年6月27日判決は、病死した入居者の相続人と連帯保証人に対し原状回復費用の支払いを課しました。
夏場に亡くなり、死後約10日で発見された事例です。
体液が床下のコンクリートまで浸透し、強い臭いが天井や壁、床の全体に染み付く汚損状態でした。
裁判所は修理工事費用として、180万5,000円を損害と算出しています。
あわせて工事などで部屋を使えなかった期間の家賃1か月分(3万3,000円)の補填も認められました。
これは、自然死では家賃の減額分ではなく、修理費用と工事期間中の家賃が賠償の対象になると示された形です。自然死でも、大家側が被った清掃の実費は適法に求められる事実を裏付けています。
アパートの孤独死の損害賠償を請求する順序
法的に最初の請求先は、入居者の立場を引き継いだ法定相続人です。
相続人から回収できない分は、連帯保証人や家賃債務保証会社へ請求し、相続人がいなければ、相続財産清算人(故人の財産を管理・清算する人)が請求先となります。
請求先ごとに請求できる範囲は、以下のとおりです。
| 順序 | 請求先 | 請求できる範囲 |
|---|---|---|
| 最優先 | 法定相続人 | 原状回復費用や未払い家賃など。 (複数なら法定相続分で按分) |
| 2番目 | 連帯保証人・家賃債務保証会社 | 連帯保証人は極度額まで。 保証会社は保証契約の範囲内 |
| 3番目 | 相続財産清算人 | 故人の遺産の範囲内。 |
家主型や入居者型の孤独死保険に加入していれば、この順序とは別に保険会社へも並行して請求できます。
ただし、保険金で補填された損害額を、遺族などに二重に請求することはできません。
補償される範囲は、保険の契約内容によって異なります。請求の段階ごとに押さえるべき手続きを、順番どおりに整理しておきましょう。
順番を理解しておけば、相続人との関係をこじらせずに回収を進めやすくなります。
まず法定相続人に法定相続分に応じて請求する
最初の請求先は、入居者の権利と義務をまとめて引き継いだ法定相続人です。(参照:民法第896条)
相続人は戸籍を取り寄せて特定し、複数いる場合は法定相続分で按分した金額をそれぞれに請求します。
請求する前に、預かっている敷金から充当できる分を差し引いておくのが基本です。
相続人には、相続するか放棄するかを考える熟慮期間が、相続の開始を知った時から3か月あります。
まずは見積書や現場の写真を送付して事実関係の共有に留めてください。
そのうえで「費用の負担については、お心が落ち着かれた頃に改めてご相談させてください」と熟慮期間に配慮する姿勢を伝えましょう。
一部の相続人が相続放棄をした場合は、残りの相続人が負担を引き継ぎます。
次に連帯保証人や家賃債務保証会社に請求する
相続人から回収できない分は、連帯保証人や家賃債務保証会社(家賃の支払いを保証する会社)に請求します。
連帯保証人には「先に相続人へ請求して」と主張する権利(催告の抗弁権)がなく、請求を拒めません(参照:民法第454条)。
支払った連帯保証人は、立て替えた分を相続人に請求できます(参照:民法第459条)。
2020年4月1日以降に結んだ契約では、個人の連帯保証人が負う上限額(極度額)を超える分は請求できません。
相続放棄をした相続人が連帯保証人を兼ねていれば、保証人としての責任は残ります。
家賃債務保証会社は残置物の撤去を保証の対象にしやすい一方、特殊清掃は対象外になりやすいのが実情です。
最後に相続財産清算人に請求する
身寄りがない場合や相続人全員が相続放棄した事案では、家庭裁判所が選任する相続財産清算人へ請求を行います。
回収までの大まかな流れは、次のとおりです。
- 家庭裁判所に相続放棄の有無を照会する
- 相続財産清算人の選任を申し立てる
- 選任後、6か月以上の公告期間を待つ
- 故人の遺産から費用の清算を受ける
大家様側は利害関係人として事実を照会し、選任を申し立てることが可能です。
その後は半年以上の公告期間を経てから、故人の遺産枠内で清算を受ける流れになります。
ただし選任までに約2か月を要するため、資金の回収は長期戦を覚悟しなければなりません。
もし故人に財産がなく連帯保証人も不在であれば、最終的な費用負担は大家側にのしかかります。
原状回復費を公的機関が補う制度もないため、事前の保険加入は欠かせないでしょう。
なお、相続放棄後の回収手順を詳しく知りたい方は、関連記事『特殊清掃費用は相続放棄でも回収できる』も読んでみてください。
アパートの孤独死の損害賠償請求で大家様が取るべき行動
請求を通すには、損害を証拠で残し、相続人の権利を守り、損害を広げず、妥当な金額で請求することが欠かせません。
なお、警察の検視が終わるまでは入室も見積もりもできないため、行動を始めるのは検視の完了後です。
特殊清掃の依頼前から請求額を決めるまで、時系列に沿って4つの行動を紹介します。
どれか1つ対応が漏れるだけで、請求額を減額されたり、最悪の場合は費用の回収そのものが頓挫してしまったりする重要なポイントです。
特殊清掃の前に写真と見積書で損害を記録する
特殊清掃で汚れを取り除けば証拠も消えるため、作業の前に写真と書類で現場を記録しておくことが欠かせません。
これらは相続人等に請求する際、被害規模を客観的に証明する材料として役立ちます。
残しておきたい記録は、次のとおりです。
- 作業前後の写真(部屋全体・汚染箇所・床下)
- 作業項目ごとの金額が分かる見積書・請求書・領収書
- 作業の工程表と完了報告書
これらの書類は、作業を依頼した業者にまとめて用意してもらうと漏れを防げます。

床下の汚損は解体時でないと見えないため、その時点での撮影も忘れてはいけません。
自分で撮影するのが難しければ、見積もり時に清掃業者へ記録を依頼するとよいでしょう。
内訳が明確な書類と確証となる写真があれば、請求先からの質問を減らして円滑に手続きを進められます。
残置物は相続人の同意を得てから処分する
部屋に残った残置物(家財)の所有権は相続人にあります。
大家様が独断で処分すると、財産の侵害として、逆に損害賠償を求められるおそれがあり危険です。
合意書や念書にサインをもらい、確実に事前の同意を得てください。遠方の場合は、メールの返信で承諾の記録を残す対応も有効です。
熟慮期間中の遺族は判断に迷うことが多いため、決断を急かすべきではありません。
処分範囲と費用見込みを書面で提示し、検討しやすい環境を整えましょう。
連絡が取れない状況でも無断廃棄は避け、相続財産清算人の選任を待ってください。
遺品から多額の現金が見つかるケースもあります。仕分けずに捨てると、費用回収のための大切な原資まで失う結果につながりかねません。

特殊清掃を早めに依頼して損害の拡大を防ぐ
警察の検視完了後は、速やかに特殊清掃を手配して汚染の拡大を抑えましょう。
孤独死現状レポートによると、大家側が発見する孤独死の3割超は死後1か月以上が経過しており、凄惨な状況に陥っていることも少なくありません。
なお、次のような初期対応はかえって被害を広げてしまうため、絶対に避けてください。
- 窓を開けたり換気扇を回したりする
- 血液や体液を自分で拭き取る
- 特殊清掃業者以外に残置物の撤去を頼む
- 部屋の電気を止める
臭いが残ると家賃の減額や空室の長期化を招く要因になります。そのため、消臭の完了をガス検知器の数値などで客観的に証明できる業者を選ぶと安心です。


誤った初期対応がもたらすリスクについては、以下の動画『孤独死が発生した後によくある、間違いだらけの対応集』でも解説しています。
経年劣化分を差し引いて請求額を決める
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に従い、特殊清掃や消臭の作業費はかかった実費を請求します。
クリーニング費用に経過年数は考慮されません。一方で、壁紙や床材を張り替える際は経年劣化分の差し引きが必要です。
6年で残存価値が1円になる基準があり、入居から1年なら約8割、3年なら約5割の負担割合を算出します。
| 入居年数 | 請求できる割合の目安 |
|---|---|
| 1年 | 約8割 |
| 3年 | 約5割 |
| 6年以上 | ほぼ0(残存価値1円) |
フローリングの全面張替えは建物の耐用年数を用い、部分補修では劣化を考慮しません。
無関係な箇所を含めた過大請求はトラブルを招くため、詳細な内訳の分かる見積書を用意しておくのが無難です。
内訳の見方については、以下の動画『見積もりの内訳 優良業者を見分けるポイントとは?』で解説しているので参考にしてください。
マインドカンパニーは明細付き見積もりを無料で作成しており、明確な根拠に基づく費用回収にお役立ていただけます。
アパートの孤独死による損害賠償リスクへの備え
請求できる相手がいない事態に備え、保険・早期発見・契約の3つの方向から手を打っておきましょう。
今のうちに整えておきたい備えは、次の4つです。
新しい入居者との契約や更新のタイミングに合わせると、無理なく取り入れられます。
家主型の孤独死保険に加入する
家主型の孤独死保険に入っておけば、相続人や連帯保証人から回収できなくても、費用を保険金で補えます。
保険の契約者と受取人が大家様のため、相続放棄の影響を受けないのがメリットです。
補償の対象は、主に遺品整理費用・原状回復費用・家賃の損失の3つに分類されます。
ただし、原状回復費用の平均損害額494,344円に対し、平均支払保険金は315,510円に留まるのが実情です。(参照:第10回孤独死現状レポート)
保険に加入していても、原状回復費用の約4割は補われない計算になります。
実際の適用可否は契約内容に左右されるため、詳細な確認が必要です。
当社は孤独死保険を扱う保険会社と業務提携しておりますので、「ご自身のケースで保険が適用されるか」といったご相談も承っております。
付帯的な保険の種類は、関連記事『入居者の孤独死や自殺が補償される3つの「孤独死保険」』を参考にしてください。
入居者に入居者型の孤独死保険を勧める
入居手続きの際に、特約付きの入居者型孤独死保険への加入を促す手段も有効です。
入居者が大家側に負う賠償責任を補償する仕組みを整えられます。
原状回復や遺品整理にかかる費用へ充てられるため、支払い原資をあらかじめ確保できるのがメリットと言えるでしょう。
ただし、契約上の受取人が入居者本人や遺族に設定される点には気をつけなければなりません。
身寄りがない事案や相続放棄が起きた状況では、保険金が下りず費用を回収できない事態も想定されます。
事前に商品の約款を読み込み、支払い条件を精査しておく対応が不可欠です。
これ単体で不安が残る場合は、大家様向け保険との併用でリスクを抑える形をご検討ください。
見守りサービスで早期発見の体制を整える
発見までの日数を縮めるには、迅速な連絡体制と見守りサービスの併用が有効です。
孤独死は発見まで平均19日かかるとされ、放置するほど床下や階下への汚染が進みます。
早期対応のため、以下のルールを徹底してください。
- 家賃の滞納があればすぐに入居者へ連絡する
- 悪臭や害虫の苦情が出た当日に部屋を確認する
- 高齢の単身入居者に見守りサービスを紹介する
同サービスには安否確認だけでなく、原状回復費用を補償するプランも存在します。
数日でも発見を早められれば、床の解体といった大規模な工事を避けられるかもしれません。
修繕費が抑えられると遺族との交渉がまとまりやすく、結果的に費用回収の確率も高まるでしょう。
残置物の処理を賃貸借契約で取り決める
国土交通省と法務省の「残置物の処理等に関するモデル契約条項」で、死後の家財処分や契約解除の手続きを事前に取り決められます。
受任者(入居者の死後に契約の解除や残置物の処理を任される人)を、あらかじめ定めておく仕組みです。
主な内容は、次のとおりとなっています。
- 対象は主に60歳以上の単身入居者
- 受任者は推定相続人・居住支援法人・管理会社など
- 家財の廃棄は死亡から3か月以上経ち、契約が終わってから
大家様自身は受任者になれない点に注意してください。
大家様が受任者を兼ねると、入居者に一方的に不利な契約として無効になるおそれがあるためです。
なお、廃棄までの3か月は相続放棄の熟慮期間とは別のルールとして定められています。
身寄りの少ない高齢の単身者と契約する際に取り入れておけば、相続財産清算人の選任を待たずスムーズな明け渡しを受けられる環境が整うでしょう。
アパートの孤独死の損害賠償に関するよくある質問
大家様や管理会社様から寄せられる、損害賠償と費用負担に関する質問にお答えします。
生活保護受給者がアパートで孤独死した場合、費用は誰が払いますか?
請求先は一般の場合と同じく、まず相続人、次に連帯保証人の順で考えます。
生活保護の葬祭扶助は葬儀のための制度で、特殊清掃や原状回復の費用は原則として支給されません。
扱いは自治体によって異なるため、福祉事務所にも確認しておくと安心です。
孤独死が起きたアパートは次の入居者に告知が必要ですか?
国土交通省のガイドラインでは、病気や老衰による自然死は原則として告知不要とされています。
ただし、長期間放置されて特殊清掃などが行われた場合は、告知の対象になります。
賃貸の場合は、発覚から概ね3年が経てば原則として告知は不要です。
事件性や社会的な影響が大きいケースは例外となるため、判断に迷う場合は仲介会社や弁護士に相談しましょう。
隣の部屋の入居者から臭いの補償や引っ越し費用を求められたら?
大家様には他の入居者に部屋を使える状態で貸す義務があるため、臭いや汚染が及んでいれば対応が必要です。
まずは早めの特殊清掃と消臭で被害の広がりを止め、生じた損害は相続人などに求められるか検討します。
引っ越し費用などの請求に応じるかどうかは、弁護士に相談して判断してください。
損害賠償を請求できる期限(時効)はありますか?
請求できることを知った時から5年、請求できる時から10年で、請求権は時効を迎えます(民法第166条)。
上記は2020年4月以降に生じた債権の期間で、請求の根拠によって期間が変わることもあります。
相続人の特定や相続放棄の確認に時間がかかるため、早めに請求の意思を書面で伝えておきましょう。
遺族や連帯保証人が支払いに応じない場合はどうすればいいですか?
まずは内訳付きの請求書と写真などの証拠を添え、内容証明郵便(送った内容を郵便局が証明する郵便)で請求します。
それでも応じない場合は、裁判所を通じた支払督促や、60万円以下なら少額訴訟を検討しましょう。
請求額が大きい場合や相手と争いになっている場合は、早めに弁護士へ相談してください。
入居者が他殺の被害者だった場合、損害賠償は誰に請求できますか?
入居者に責任はないため、家賃の減額分などの損害賠償は、相続人や連帯保証人ではなく加害者に請求します。
汚れた部屋の原状回復費用を相続人に求められるかは、個別の事情で判断が分かれます。
請求する場合は、特殊清掃や原状回復にかかった実費を見積書で示し、相続人に書面で相談する形で進めましょう。
死因がはっきりしない場合、損害賠償の請求はどう判断されますか?
孤独死現状レポートでは、孤独死の死因の33.7%が「不明」で、腐敗で特定が難しいケースも含まれます。
家賃の減額分のように入居者の落ち度が前提となる損害は、大家様側が落ち度を示せなければ認められにくくなります。
一方、特殊清掃や原状回復の費用は、死因が不明でも請求の対象です。
アパートの孤独死の損害賠償は早めの原状回復で損失を抑えよう
孤独死の損害賠償において、請求可能な範囲は死因に左右されます。
自殺や重大な過失であれば家賃の損失まで対象に含まれ、自然死でも特殊清掃や原状回復の実費は請求の対象です。
実際の交渉は法定相続人から連帯保証人、相続財産清算人の順で段階的に進めなくてはなりません。
請求を通すには、着工前の客観的な記録や遺品処分の同意取得、経年劣化の控除が欠かせない要素となります。
また、被害を最小限に食い止めるための迅速な初期対応も不可欠です。
マインドカンパニーでは保険適用の可否も視野に入れ、作業明細が明確な見積書を無料で作成しております。
費用回収に向けた確かな根拠を揃えられますので、まずはお気軽にご相談ください。
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