孤独死現場の原状回復
孤独死が発生し長期間に及びご遺体が発見されず放置されていた場合には、体液が流れ出て非常に強い死臭(腐敗臭)が漂います。時期によっては2~3日の放置期間で部屋全体、ひどい場合には部屋の外にまで悪臭が広がってしまうこともあります。
賃貸物件であれば大家・不動産会社から原状回復(汚染箇所の除去、悪臭の消臭)を求められ、分譲物件であっても再度入居可能な状態に復旧するためには特殊清掃をおこなう必要があります。
特殊清掃は現在非常に高いレベルでの作業が可能になっています
孤独死現場の悪臭を完全消臭する技術はすでに開発されており当社でも導入しております。
ただし、レベルの低い特殊清掃業者は数多く存在するためお客様には高い技術力と専門知識を持った会社をお探しいただく必要がございます。
孤独死現場を再入居可能にするまでの現状回復【フローリング編】
現場へ到着し部屋を見渡すと、既に家財は全て片付いた状態でフローリングの一部に体液が付着している状態でした。
大量の体液が付着しているわけではないので一見大したことのない孤独死現場に写真では見えるかもしれませんが非常に悪臭が強く、今までの経験からこの体液の付着量でここまでの死臭がするのは異常と判断し床下に体液がしみ込んでしまっている可能性が高いとの旨をお伝えさせていただきました。
今回ご依頼いただいた不動産管理会社様は「体液のしみ込んでいる状態では新たな入居者に貸し出すことはできない。原状回復のリフォームまですべて依頼したい」とのことでしたので、汚染部の解体、消臭、原状回復工事まで弊社で一括して行う流れとなりました。
今回のように床下まで体液がしみ込んでいない場合でも体液のシミを完全に清掃で落としきることは難しく、次の入居者とのトラブルになることが多いので、不動産会社様には一部のみでも解体しリフォーム工事をおこなうことをおすすめしております。一般のお客様はどこまで原状回復作業を負担しなければいけないのかについて、不動産の管理会社(もしくは大家)としっかりとした打ち合わせが必要となります。
消臭除菌剤の散布からスタートです。
特殊清掃の作業は除菌に始まり除菌に終わります。孤独死現場には多くのウイルスや菌が浮遊しているので安全に作業をおこなうため防護服とゴーグルを着用したうえで除菌剤の散布をおこないます。
弊社ではフォグマスターという電動噴霧器を使用し、複合型二酸化塩素を散布いたします。このフォグマスターを使用することで薬剤を目で見えるか見えないか程の小さな霧状にすることができるので高い除菌効果が望めます。
電気が止まっている場合は電力会社に連絡して電気の開通手続きを依頼するか、電動のフォグマスターは使用せず手動で圧力をかけるタイプの噴霧器を使用します。ただし電気が使えないとオゾン脱臭機も使用できないので消臭作業までには電気の開通手続きをおこなうことがほとんどです。
フローリングの厚みを知るための作業
解体前にまずは汚染部分の清掃を簡易的に行います。解体後は汚染部分の近くを小さく電動ノコギリで切断しフローリングの厚みを調べます。
必要以上に電動ノコギリの歯を出していると根太(画像参照)まで不容易に切断してしまう恐れがあるので、このフローリングの厚みを調べる作業は非常に重要です。小さく切断するときは少しずつ電動ノコギリの刃を出して進めていきます。
切り取ったフローリングをノギスで厚みを測定し(画像3枚目)電動ノコギリの歯をどれだけいいのか決定します。
今回の作業では12mmのフローリングとその下に12mmの捨て貼り(湿気防止などのために施工する場合があります)が敷かれていたので合計24mmでした。
フローリングと同じ厚みのコンパネを型抜き
今回の作業では汚染部分を解体しそこに新しくコンパネをはめ、PVCフローリング(フローリング調のシート)を貼り付けて作業完了でしたのでまずは床材と同じ厚みである24mmのコンパネを準備しました。
準備したコンパネを汚染部の上でビスを打ち固定した後に、コンパネと床材を同時に切断します。同時に切断しないと後からコンパネを切断部分に合わせてサイド切断するのは非常に難しいので同時に切断することで作業を効率化、かつ正確に行うことができます。
床下の汚染確認とその対処
電動ノコギリで切断したコンパネとフローリングを床から取り外したところ、やはり最初の推測通り床下まで体液が染み込んでいました。
床下の特殊清掃には大きく分けて2つあり、汚染された根太を切断し除去する方法と清掃後に防臭剤を使用して匂いを閉じ込める方法で、今回は後者の清掃と防臭剤の塗布する方法を選びました。この2種類の方法の選択の仕方については汚染の具合や最終的な施工方法によって総合的に判断いたします。
清掃後に防臭剤を塗布するのですが、プライマーと呼ばれる下地材を塗布した後に防臭剤を塗布することで木材との密着性が高くなり、防臭効果が高くなります。
防臭剤の乾燥と壁紙剥がし
下地材のプライマーが完全に乾くまで防臭剤を塗ることはできず、防臭剤を塗布した後も完全に乾いて臭いがないことを確認する必要があるのでここで空き時間が生まれます。
この空き時間を利用して部屋全体の壁紙(クロス)を剥がしていきます。壁紙をそのままにして消臭作業をしても完全消臭はできないので壁紙剥がしは必須と言えます。ただし現場の状況によってはすべての壁紙を剥がす必要はなく、消臭作業で壁紙の臭いをとることができることもあるので最善の作業を提案させていただきます。
防臭剤の乾燥後にしっかりと悪臭の検査をします。これで仮に臭いが取れていない場合は根太を切断する方法に施工を切り替えますがこれまでの作業の経験でほとんど間違えることなくどちらの作業を行うべきなのか判断することができます。
根太の増設
今回のようにフローリング床をコンパネで穴埋めする場合には元の根太の上にコンパネを貼り付けるだけでは時間が経つと端が陥没(かんぼつ)してくる恐れがありますので、両サイドに根太の増設が必要になります。
コンパネを設置しパテで隙間を埋める
増設した根太の上にコンパネをはめ込みビス(ねじ)で固定しました。
隙間があると湿気などの問題が発生する恐れがあるので、パテを使ってコンパネとフローリングのわずかな隙間を埋めました。
コンパネで穴埋め設置した面を平らにしていきます。
パテが乾くのを待ち、この作業を2回から3回繰り返します。これも問題発生を防ぐために必要な行程です。
ですが、2~3回のパテ塗りを繰り返すとその部分が盛り上がってしまうため、ヤスリで盛り上がった部分を削ることですべての面を平らにします。
完全消臭のためにルームクリーニング
悪臭の強い現場は汚染箇所だけではなく家中に臭いが染み込んでおり、キッチンの油汚れやホコリなども臭いが染み込んでいるため家中の隅々までルームクリーニングを行います。見える部分だけではなく換気扇内の部品の油汚れなども徹底清掃いたします。
これが他社とマインドカンパニーとの1番の違いです。ルームクリーニングにどこまで力を入れるかで最終的な仕上がりに大きな差が生まれます。
ヒドロキシルラジカル燻蒸と原状回復
ここまでの工程で作業前と比べるとかなり臭いは収まっているのですが、何も知らない人が入室するとまだまだ臭いと感じるレベルです。
なので最終工程はヒドロキシル発生器を使いお部屋を完全消臭いたします。
今回は3日間ヒドロキシル発生器を稼働させ完全消臭となりました。完全消臭の判断は人間の嗅覚で感じることができないのはもちろんのこと、臭気測定器を利用することや、専門機関に臭気測定を依頼する場合もあります。
もしヒドロキシルラジカル燻蒸をしても臭いが取れていなかった場合には何か別の要因があっての悪臭なのでその要因を探します。
最後に壁紙を貼り、PVCフローリングを床全体に貼り付けてお客様へ引き渡しとなりました。
参考までに、この現場の作業料金をお知らせいたします。
特殊清掃作業 | 280,000円(税込308,000円)(1式) |
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現状回復工事 | 270,000円(税込297,000円)(一式) |
合計 | 550,000円(税込605,000円) |